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犬の歯周病とデンタルケアについての4つのポイント

2021.10.20

皆さんはいつもそばにいるワンちゃんのお口を見たことはありますか?

また、お口からの臭いが気になったりしたことはありませんか?

「うちの子はかわいいけれどお口が。。。」といった状況は避けたいですよね。

今回はワンちゃんのお口のトラブルで特に多い、「歯周病」についてお話します。

 

 

このコラムの内容

  • 歯周病ってどんな病気?
  • なぜ治療が必要なの?   ~歯周病の怖いところ~
  • 治療はどうやって行うの? ~病院でできること~
  • 歯周病を防ごう!     ~家での実践編~

 

 

  • 歯周病ってどんな病気? 

歯周病にかかっているワンちゃんはとても多く、1歳以上の犬の9割が歯周病の可能性があるといわれています。

どの犬種でも多いですが、特に小型犬や短頭種(パグ、フレンチブルドッグ、チワワなどの鼻がつぶれている犬種)に多い傾向があります。

分かりやすい症状は口臭で、においがある時点で歯周病はあります。

では実際に歯周病があるとどんな見た目になるか、見ていきましょう。

 

まずは歯周病がない子の写真です。

歯茎がきれいなピンク色で、歯に汚れもありません。

 

 

次に中程度歯石付着の子の写真。

 

 

そして重度歯周病の子の写真です。

 

 

 

 

犬歯(手前のとがった歯)や臼歯(奥歯)に歯石が付着し、重度では歯茎も赤くただれています。

このような重度歯周病の症例であれば抜歯しなければならない歯はたくさんあります。

 

歯周病は、歯と歯茎の隙間にある歯周ポケット内に歯垢・歯石がたまることで悪化していきます。

歯垢・歯石は細菌のカタマリで、愛犬の口の中にそんなものがあるなんてゾッとしますね。。。

 

  • なぜ治療が必要なの? 

歯周病を放置すると、口臭や痛みに加え、下のような様々な病気に発展していくこともあります。どれも歯周ポケット内の歯垢・歯石が原因です。

歯槽骨吸収

歯槽骨(歯を支えるための骨)が歯周ポケット内の歯周病菌によって溶けてしまう病気です。歯の支えがなくなってしまうのでグラグラになったり、痛みも出てきます。歯茎もやせ衰えてしまっているので、歯根分岐部(歯の根っこが枝分かれしているところ)も見えてしまうことがあります。

歯根尖膿瘍

歯根部(歯の根元)に膿が溜まってしまう病気です。上顎に発生することが多く、急に頬が腫れて強い痛みだけでなく、出血・排膿が認められることもあります。

慢性鼻炎

上述の歯根尖膿瘍が犬歯に起きてしまうと膿が鼻にまで広がってしまいます。激しいくしゃみやドロッとした鼻水が特徴です。鼻の骨が溶けてしまったり、歯が抜けてしまった後も口に穴が開いてしまった状態になることで症状が残ることもあります。

歯性病巣感染

歯周病の恐ろしさは口の病気にとどまらないという所です。一般的に歯周病や虫歯が原因で、細菌毒素などにより歯とは離れた全身に病気が生じる事があります。ヒトの医療でも多くの病気と関連があると言われていますが、ワンちゃんネコちゃんでは歯周病が心臓病や腎臓病、肝臓病の原因となり得ることが近年の研究で分かってきています。

 

  • 治療はどうやって行うの?

獣医師による診察で具体的な歯周病治療を相談しますが、歯石除去、歯周ポケットのクリーニング、歯の表面の研磨といった処置が多いです。

②でご紹介したような重度な歯周病に発展してしまった場合は、これらに加えて抜歯などが必要になることもあります。

当院ではこれらの歯周病治療は安全のために麻酔をかけて実施します。

アメリカ動物病院協会(AAHA)では、特にお口の症状がない子でも「2歳の時に初めて歯周病治療を行い、その後は最低でも1年に1回の歯周病治療」を推奨していて、「年に1回の歯周病治療で死亡リスクが低下する」といったデータも発表されています。

 

最近では無麻酔で歯石除去を行うケースも増えてきていますが、それでは歯周病の原因となる歯周ポケット内のクリーニングができません。

またワンちゃんを抑える必要もあり、強いストレスをかけてしまい思わぬ事故やトラウマにつながりかねないので、絶対にやめてください。

麻酔をかけずに口腔内をキレイにするためには、次に紹介するお家でのケアが最も効果的です。

 

  • 歯周病を防ごう! 

お家でのケアは口内環境をキレイに保つためには最も重要です。

ワンちゃんのお口では、最短3日ほどで歯垢が歯石に変わっていきます。これはヒトの5倍のスピードです。

歯石になってしまうとお家で除去することはできないので、歯垢の段階で除去することがとても大切になります。

 

歯磨きトレーニングは「お座り」や「お手」と同じで、ご褒美を使いながら楽しく行いましょう。

お口を指で触れることから始めていき、触れたらすぐにほめたりご褒美をあげます。

お口が触れるようになったら歯磨きシートや歯ブラシなどのデンタルグッズを使っていければなお良しですが、ここでもデンタルグッズに慣れてもらうことから開始します。

シートやブラシで歯茎をタッチするところから開始し、「口に入っても怖くない」、「歯磨きをされると褒めてもらえて楽しい!」と思ってもらえば歯磨きができるようになります。

ワンちゃんたちはヒトみたいに1度に全ての歯を歯磨きすることが難しいので、何回かに分けて行いましょう。

 

歯磨きガムをご自宅で使っている方も多いかもしれませんが、硬すぎるものは歯が折れてしまう原因になるのでお勧めできません。

かじると歯型がつく程度の硬さのものを選びましょう。

VOHC(米国獣医口腔衛生協議会)認定マークがついているものであれば、口腔ケアグッズの中でも効果があり信用できる製品になるので、大変おすすめです。

 

 

いつまでもワンちゃんの健康を維持するだけでなく長生きのためにも、定期的な歯周病治療はとても重要です。

うちの子のお口は大丈夫か、歯磨きの方法についてもっとよく知りたい、この子にはどのような治療法がベストか、歯周病治療を行いたいが麻酔が心配、、、など少しでも気になることがあればお気軽にご相談ください。

 

現在、実践的な内容で月末に歯磨き教室も開催していますので、ぜひご参加ください!

 

お家でのお口のケアについては当ブログの「自宅でできるデンタルケア」で改めて詳しくお話しさせていただきますので、そちらの記事もぜひご覧になって下さい。

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